首の主な疾患・症状
頸椎椎間板ヘルニア
頸椎椎間板の変性により分節化した椎間板組織が、弱くなった線維輪や後縦靭帯を穿破したものがヘルニアです。それが神経根や脊髄を圧迫することで、上肢の疼痛・しびれや頚部・肩甲部の疼痛、手指巧緻障害、歩行障害などが生じます。確定診断にはMRIを用います。
ヘルニアによる神経根症は、自然退縮の可能性があるため内服や理学療法などの保存治療が基本となります。一方脊髄症が生じている場合は、神経障害の不可逆性変化が生じる前に手術治療を選択します。
頚椎症性神経根症
代表的な症状は、長引く強い寝違え症状や急な片側頚部や肩甲部痛です。上を向くと痛いので高いところのものを取れないとか、美容室でのシャンプーが痛いなど、首を伸展するのが困難になることも多いです。頸椎の変形(骨棘)や頸椎椎間板ヘルニアによる神経根の圧迫により発症します。第5/6頸椎レベルが最頻で、第6/7、第4/5が、それに続きます。
プレガバリンやミロガバリンベシル(Caチャネルα2δリガンド)、デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)が効果的で、神経障害性疼痛ガイドラインでもファーストラインとなっています。
頚椎症性脊髄症
そもそもの頚部脊柱管狭窄が背景にあり、加齢退行性変化が加わることで脊髄の機械的圧迫が生じた結果発症します。初発症状は両手のしびれや巧緻運動障害で、重症化すると箸が使えない、歩行困難、膀胱直腸障害が生じます。発症は男性が女性の約2倍、50代が多く、第5/6頸椎レベルが多いですが、高齢者ではそれより上位レベルが増えてきます。
診断にはMRIが必須です。感覚障害が主な症状で、運動障害が軽微な場合は内服などの保存治療、神経障害が高度の場合は手術を選択することが多いです。
後縦靭帯骨化症
頸椎椎体の後方支持組織である後縦靭帯が骨化することで、脊柱管内前方から神経を圧迫し神経症状をきたす疾患です。男性が女性の2倍発症し、その原因として家族性があり、内分泌・代謝疾患との関連も指摘されています。
診断には頸椎単純CTで骨化病巣の形態や広がり、MRIで頚髄の圧迫程度や髄内輝度変化を確認します。臨床症状や治療戦略は、頸椎症性脊髄症と基本的に同等で、進行性の場合手術を適応します。